祝! 栃ノ心初優勝!! 平成の歴代優勝力士から見る「平幕優勝って凄いんです」/大相撲(2)
平成30年初場所、平幕(前頭三枚目)の栃ノ心が、見事に初優勝を果たしました。
暴行事件による日馬富士の引退など、一連の騒動から不穏な幕開けを迎え、さらに横綱白鵬、稀勢の里までが連敗→休場と、良くないイメージが付いて回った場所でした。鶴竜の初日からの10連勝はさすが横綱という感じでしたが、正直このまま鶴竜が全勝優勝しても、何かぱっとしないなと思っていました(鶴竜さんごめんなさい)。その10連勝の時点で、1敗と食らいついていたのが優勝した栃ノ心でした。まさかこんな結末になるとは。。。途中まで上位につけていても、それが平幕力士だと「優勝までは行かんだろう・・・」と思ってしまうわけです。どうもすみませんでした。
そうです。この平幕優勝というのがなかなか凄い偉業なんです。平幕(横綱や三役についていない幕内)力士の優勝は、平成24年(2012年)5月場所の旭天鵬以来、6年ぶりの快挙でした。
どれくらいのレアケースなのか、平成以降の歴代優勝力士一覧で見てみましょう。黄色の網掛けが平幕優勝力士です。
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【平成以降の歴代優勝力士一覧】
場所 | 優勝力士 | 通算優勝 |
---|---|---|
2018年(平成30年)1月 | 栃ノ心 | 1 |
2017年(平成29年)11月 | 白鵬 | 40 |
2017年(平成29年)9月 | 日馬富士 | 9 |
2017年(平成29年)7月 | 白鵬 | 39 |
2017年(平成29年)5月 | 白鵬 | 38 |
2017年(平成29年)3月 | 稀勢の里 | 2 |
2017年(平成29年)1月 | 稀勢の里 | 1 |
2016年(平成28年)11月 | 鶴竜 | 3 |
2016年(平成28年)9月 | 豪栄道 | 1 |
2016年(平成28年)7月 | 日馬富士 | 8 |
2016年(平成28年)5月 | 白鵬 | 37 |
2016年(平成28年)3月 | 白鵬 | 36 |
2016年(平成28年)1月 | 琴奨菊 | 1 |
2015年(平成27年)11月 | 日馬富士 | 7 |
2015年(平成27年)9月 | 鶴竜 | 2 |
2015年(平成27年)7月 | 白鵬 | 35 |
2015年(平成27年)5月 | 照ノ富士 | 1 |
2015年(平成27年)3月 | 白鵬 | 34 |
2015年(平成27年)1月 | 白鵬 | 33 |
2014年(平成26年)11月 | 白鵬 | 32 |
2014年(平成26年)9月 | 白鵬 | 31 |
2014年(平成26年)7月 | 白鵬 | 30 |
2014年(平成26年)5月 | 白鵬 | 29 |
2014年(平成26年)3月 | 鶴竜 | 1 |
2014年(平成26年)1月 | 白鵬 | 28 |
2013年(平成25年)11月 | 日馬富士 | 6 |
2013年(平成25年)9月 | 白鵬 | 27 |
2013年(平成25年)7月 | 白鵬 | 26 |
2013年(平成25年)5月 | 白鵬 | 25 |
2013年(平成25年)3月 | 白鵬 | 24 |
2013年(平成25年)1月 | 日馬富士 | 5 |
2012年(平成24年)11月 | 白鵬 | 23 |
2012年(平成24年)9月 | 日馬富士 | 4 |
2012年(平成24年)7月 | 日馬富士 | 3 |
2012年(平成24年)5月 | 旭天鵬 | 1 |
2012年(平成24年)3月 | 白鵬 | 22 |
2012年(平成24年)1月 | 把瑠都 | 1 |
2011年(平成23年)11月 | 白鵬 | 21 |
2011年(平成23年)9月 | 白鵬 | 20 |
2011年(平成23年)7月 | 日馬富士 | 2 |
2011年(平成23年)5月 | 白鵬 | 19 |
2011年(平成23年)3月 | ※本場所中止 | |
2011年(平成23年)1月 | 白鵬 | 18 |
2010年(平成22年)11月 | 白鵬 | 17 |
2010年(平成22年)9月 | 白鵬 | 16 |
2010年(平成22年)7月 | 白鵬 | 15 |
2010年(平成22年)5月 | 白鵬 | 14 |
2010年(平成22年)3月 | 白鵬 | 13 |
2010年(平成22年)1月 | 朝青龍 | 25 |
2009年(平成21年)11月 | 白鵬 | 12 |
2009年(平成21年)9月 | 朝青龍 | 24 |
2009年(平成21年)7月 | 白鵬 | 11 |
2009年(平成21年)5月 | 日馬富士 | 1 |
2009年(平成21年)3月 | 白鵬 | 10 |
2009年(平成21年)1月 | 朝青龍 | 23 |
2008年(平成20年)11月 | 白鵬 | 9 |
2008年(平成20年)9月 | 白鵬 | 8 |
2008年(平成20年)7月 | 白鵬 | 7 |
2008年(平成20年)5月 | 琴欧洲 | 1 |
2008年(平成20年)3月 | 朝青龍 | 22 |
2008年(平成20年)1月 | 白鵬 | 6 |
2007年(平成19年)11月 | 白鵬 | 5 |
2007年(平成19年)9月 | 白鵬 | 4 |
2007年(平成19年)7月 | 朝青龍 | 21 |
2007年(平成19年)5月 | 白鵬 | 3 |
2007年(平成19年)3月 | 白鵬 | 2 |
2007年(平成19年)1月 | 朝青龍 | 20 |
2006年(平成18年)11月 | 朝青龍 | 19 |
2006年(平成18年)9月 | 朝青龍 | 18 |
2006年(平成18年)7月 | 朝青龍 | 17 |
2006年(平成18年)5月 | 白鵬 | 1 |
2006年(平成18年)3月 | 朝青龍 | 16 |
2006年(平成18年)1月 | 栃東 | 3 |
2005年(平成17年)11月 | 朝青龍 | 15 |
2005年(平成17年)9月 | 朝青龍 | 14 |
2005年(平成17年)7月 | 朝青龍 | 13 |
2005年(平成17年)5月 | 朝青龍 | 12 |
2005年(平成17年)3月 | 朝青龍 | 11 |
2005年(平成17年)1月 | 朝青龍 | 10 |
2004年(平成16年)11月 | 朝青龍 | 9 |
2004年(平成16年)9月 | 魁皇 | 5 |
2004年(平成16年)7月 | 朝青龍 | 8 |
2004年(平成16年)5月 | 朝青龍 | 7 |
2004年(平成16年)3月 | 朝青龍 | 6 |
2004年(平成16年)1月 | 朝青龍 | 5 |
2003年(平成15年)11月 | 栃東 | 2 |
2003年(平成15年)9月 | 朝青龍 | 4 |
2003年(平成15年)7月 | 魁皇 | 4 |
2003年(平成15年)5月 | 朝青龍 | 3 |
2003年(平成15年)3月 | 千代大海 | 3 |
2003年(平成15年)1月 | 朝青龍 | 2 |
2002年(平成14年)11月 | 朝青龍 | 1 |
2002年(平成14年)9月 | 武蔵丸 | 12 |
2002年(平成14年)7月 | 千代大海 | 2 |
2002年(平成14年)5月 | 武蔵丸 | 11 |
2002年(平成14年)3月 | 武蔵丸 | 10 |
2002年(平成14年)1月 | 栃東 | 1 |
2001年(平成13年)11月 | 武蔵丸 | 9 |
2001年(平成13年)9月 | 琴光喜 | 1 |
2001年(平成13年)7月 | 魁皇 | 3 |
2001年(平成13年)5月 | 貴乃花 | 22 |
2001年(平成13年)3月 | 魁皇 | 2 |
2001年(平成13年)1月 | 貴乃花 | 21 |
2000年(平成12年)11月 | 曙 | 11 |
2000年(平成12年)9月 | 武蔵丸 | 8 |
2000年(平成12年)7月 | 曙 | 10 |
2000年(平成12年)5月 | 魁皇 | 1 |
2000年(平成12年)3月 | 貴闘力 | 1 |
2000年(平成12年)1月 | 武双山 | 1 |
1999年(平成11年)11月 | 武蔵丸 | 7 |
1999年(平成11年)9月 | 武蔵丸 | 6 |
1999年(平成11年)7月 | 出島 | 1 |
1999年(平成11年)5月 | 武蔵丸 | 5 |
1999年(平成11年)3月 | 武蔵丸 | 4 |
1999年(平成11年)1月 | 千代大海 | 1 |
1998年(平成10年)11月 | 琴錦 | 2 |
1998年(平成10年)9月 | 貴乃花 | 20 |
1998年(平成10年)7月 | 貴乃花 | 19 |
1998年(平成10年)5月 | 若乃花 | 5 |
1998年(平成10年)3月 | 若乃花 | 4 |
1998年(平成10年)1月 | 武蔵丸 | 3 |
1997年(平成9年)11月 | 貴ノ浪 | 2 |
1997年(平成9年)9月 | 貴乃花 | 18 |
1997年(平成9年)7月 | 貴乃花 | 17 |
1997年(平成9年)5月 | 曙 | 9 |
1997年(平成9年)3月 | 貴乃花 | 16 |
1997年(平成9年)1月 | 若乃花 | 3 |
1996年(平成8年)11月 | 武蔵丸 | 2 |
1996年(平成8年)9月 | 貴乃花 | 15 |
1996年(平成8年)7月 | 貴乃花 | 14 |
1996年(平成8年)5月 | 貴乃花 | 13 |
1996年(平成8年)3月 | 貴乃花 | 12 |
1996年(平成8年)1月 | 貴ノ浪 | 1 |
1995年(平成7年)11月 | 若乃花 | 2 |
1995年(平成7年)9月 | 貴乃花 | 11 |
1995年(平成7年)7月 | 貴乃花 | 10 |
1995年(平成7年)5月 | 貴乃花 | 9 |
1995年(平成7年)3月 | 曙 | 8 |
1995年(平成7年)1月 | 貴乃花 | 8 |
1994年(平成6年)11月 | 貴乃花 | 7 |
1994年(平成6年)9月 | 貴ノ花 | 6 |
1994年(平成6年)7月 | 武蔵丸 | 1 |
1994年(平成6年)5月 | 貴ノ花 | 5 |
1994年(平成6年)3月 | 曙 | 7 |
1994年(平成6年)1月 | 貴ノ花 | 4 |
1993年(平成5年)11月 | 曙 | 6 |
1993年(平成5年)9月 | 曙 | 5 |
1993年(平成5年)7月 | 曙 | 4 |
1993年(平成5年)5月 | 貴ノ花 | 3 |
1993年(平成5年)3月 | 若花田 | 1 |
1993年(平成5年)1月 | 曙 | 3 |
1992年(平成4年)11月 | 曙 | 2 |
1992年(平成4年)9月 | 貴花田 | 2 |
1992年(平成4年)7月 | 水戸泉 | 1 |
1992年(平成4年)5月 | 曙 | 1 |
1992年(平成4年)3月 | 小錦 | 3 |
1992年(平成4年)1月 | 貴花田 | 1 |
1991年(平成3年)11月 | 小錦 | 2 |
1991年(平成3年)9月 | 琴錦 | 1 |
1991年(平成3年)7月 | 琴富士 | 1 |
1991年(平成3年)5月 | 旭富士 | 4 |
1991年(平成3年)3月 | 北勝海 | 8 |
1991年(平成3年)1月 | 霧島 | 1 |
1990年(平成2年)11月 | 千代の富士 | 31 |
1990年(平成2年)9月 | 北勝海 | 7 |
1990年(平成2年)7月 | 旭富士 | 3 |
1990年(平成2年)5月 | 旭富士 | 2 |
1990年(平成2年)3月 | 北勝海 | 6 |
1990年(平成2年)1月 | 千代の富士 | 30 |
1989年(平成元年)11月 | 小錦 | 1 |
1989年(平成元年)9月 | 千代の富士 | 29 |
1989年(平成元年)7月 | 千代の富士 | 28 |
1989年(平成元年)5月 | 北勝海 | 5 |
1989年(平成元年)3月 | 千代の富士 | 27 |
1989年(平成元年)1月 | 北勝海 | 4 |
いかがでしょか。今回の栃ノ心から、前回平幕優勝した旭天鵬まで遡るのも大変ですが、旭天鵬の前の琴光喜までは、さらになんと11年!分もスクロールしなくてはいけないという長い長い間隔が開いています。
この表にあるように、平成以降の平幕優勝力士は栃ノ心を含めて9人。平成の174人の幕内優勝力士のうち9人ですから、割合にして5.1%。前述した平成24年(2012年)5月場所の旭天鵬、平成13年(2001年)9月場所の琴光喜、平成12年(2000年)3月場所の貴闘力、平成10年(1998年)11月場所の琴錦、平成4年(1992年)7月場所の水戸泉、同年1月場所の貴花田、平成3年(1991年)9月場所の琴錦、同年7月場所の琴富士という顔ぶれ。このうち、横綱まで昇進したのは貴花田(横綱時代は貴乃花)ただ一人です。彼ら(のべ)9人の通算優勝回数で見ると、生涯で複数回優勝しているのは貴花田の22回と琴錦の2回のみ。貴花田は別次元の話として、平幕優勝しかしていない琴錦も凄いです(2度の平幕優勝は史上唯一)。このように、「将来横綱になるような力士は平幕優勝するもんだよ」みたないな定番の出世街道というわけではなく、むしろ苦労人による血と汗と涙の奇跡という感じです。これだけレアだからこそ私のような素人は、10日目まで平幕力士が食らいついていても、失礼ながら期待薄でいるわけです。
さて、そんな偉業を成し遂げた栃ノ心。ジョージア出身の30歳で、大相撲の歴史に記念すべき5か国目の日本以外の優勝国を刻みました。アメリカ(高見山等)、モンゴル(朝青龍等)、ブルガリア(琴欧州)、エストニア(把瑠都)に次ぐ優勝となりました。
わかる人はほとんどいないと思いますが、どうしてもリングス(総合格闘技団体)で活躍したビターゼ・タリエルやグロム・ザザ、サッカーのACミランで長く活躍したカハ・カラーゼなどの影響で、強烈に「グルジア」という国名を認識していたため、単に読み方の問題なんですが、まだ「ジョージア」に馴染めていないんです。どうでもいい話ですが。
栃ノ心さん、なかなか山あり谷ありの力士で、怪我も多く、素行面でも門限破りや服装違反で親方にゴルフクラブで殴られ世間を騒がすなど、決して順風満帆とは言えない12年の末、ようやく栄光を掴みました。そんな苦労人的な物語もいい感じじゃありませんか。今、彼以上に「ジョージア」を日本に広められる人はいないでしょう。
そう、この感じ。。。缶コーヒーのCM出演依頼とか、来るといいですね。(あっちはアメリカのジョージアですけど)
[大相撲2018初場所14日目] 栃ノ心が幕内初優勝!!対 松鳳山 栃ノ心インタビュー付
以上です。※敬称略